たくさんのご応募ありがとうございました。
全国から寄せられた、総数1,642点の中から
見事入賞された方々を発表いたします。

■ 審査員

写真家 市橋 織江

写真家 1978年生まれ
広告写真、グラフィック、エディトリアルなど他分野での撮影を手掛ける。
TVCMなどシネマトグラファーとしても活動。
写真集や写真展での作品発表も行い、主な写真集に「TOWN」「Gift」「PARIS」「BEATIFUL DAYS」「SHIBUYA-KU」など。

松本PARCO

1984年の開業以来、ファッション性・先進性の追求と「PARCO」ならではのライフスタイル提案を行ってきた。
ファッションだけではなく、アート・カルチャーなど様々な商品やサービスを提供しながら松本の街に根付いた運営を行う。

■ 総 評

今回のフォトコンテストに応募してくださった作品全てを見させていただき、想像以上に素晴らしい作品が多くとても驚きました。松本の自然の美しさや土地の持つ歴史、豊かさを表現した作品達を一枚一枚拝見していると、私自身たくさんの感動をいただくことがあり、知らなかった松本の素晴らしさを教えていただいているような気持ちになりました。どの作品も、それぞれの目線で松本の良さを愛を持って表現していて、また写真について真剣に取り組んでおられる作品も多く、審査する時間は元気をもらえるような幸せな時間で、改めて写真って良いなぁと感じさせられるものでした。
たくさんの素晴らしい作品の中から選出することはとても難しかったのですが、私自身の写真に対するテーマである「心が動くこと」ということを今回はキーワードとさせていただきました。ただ美しいだけではなく、何かストーリーを感じるような、心がざわっとするような写真が好きです。心が動いて気になって、何度も見てしまう、見れば見るほど好きになる、そんな作品達を選ばせていただきました。
ただ、限られた数の各賞に絞ることが果たして正しいのか?と思ってしまうほど、素晴らしい写真なのに選出することが出来なかった作品が沢山あります。それらの素敵な写真達を選出できなかったことに申し訳ない気持ちでいっぱいです。今回は市橋というフィルターを通した中での好みに基づいた選出になっているということ、それぞれの写真の素晴らしさは変わらないということ、ご理解いただけたらと思います。改めて松本の良さを教えてくださった皆様、写真の楽しさを教えてくださった皆様に、心から感謝したいと思います。

■ 最優秀賞

残したいそこにある風景
久我 奈緒子
撮影地:安曇野市
素晴らしい自然の風景や美しい桜の作品も沢山あった中、この作品を見た時の心の動き方 はどこか他とは違っていてずっと気になって何度も見てしまう感覚がありました。見る人によって捉え方は異なるかも知れませんが、この風景をこのバランス感で作品にされたその感覚にとても共感出来たこと、またこの一枚から、時の流れを感じるとともに様々な感情を感じられたこと、写真の持つ力に改めて気づけるような素敵な作品だと思います。

■ 優秀賞

大冒険
今木 寿英
撮影地:松本市
個人的なことではあるのですが、幼少期家族でたくさんの山に登り旅をすることが多かっ た自分の記憶を優しい空気感で思い出させてくれた一枚で、心を掴まれました。そこにはかけがえのない時間があって、それを温かい目線で見守っているような撮り方が良いなと思いました。見ていてとても温かい気持ちになる作品です。

■ パルコ賞

energetic
矢満田 浩
撮影地:松本市
本年、久しぶりに松本PARCOとしても参加した松本ぼんぼん。次世代にも是非残すべき、伝統的な行事だと思います。そんな一幕を、街や人々の温度を感じながら、松本らしい澄んだ空気感を切り取っているとても素晴らしい写真だと思い選定させていただきました。

■ 入賞

見て見て、この柔軟性。
石井 利幸
撮影地:安曇野市
月夜に翔ぶ
加藤 良一
撮影地:安曇野市
雪に包まれる
川﨑 至朗
撮影地:塩尻市
陽光を浴びながら
川野 精一
撮影地:松本市
Balanced Serenity
カンデゲ スバース
撮影地:松本市
奈良井宿と春の雪
窪田 志功
撮影地:塩尻市
時散歩
執行 夏輝
撮影地:塩尻市
麗らか
中田 ゆりは
撮影地:松本市
涼風
Hanrinri
撮影地:松本市
きれいだね〜
森川 和仁
撮影地:安曇野市
『見て見て、この柔軟性。』/田植えという重労働であろう作業を、楽しそうに見せてくれたのが何よりも嬉しかった作品です。躍動感や人の魅力を写した作品の中でも、このリアルな姿に無言の強さとユーモアを感じて好きでした。水平を大きく傾けていたのが気になって、試しに正しい角度に直してみたら断然この角度の方が面白かったのがすごいと思いました。
『月夜に翔ぶ』/月と山並みと飛ぶ鳥と、ここに写っているものはすべてとても遠くにあるものだけですし、そして構成要素もとても少なくシンプルなのですがその切り取り方に力みが無いように感じられ、さりげなさとのバランスが絶妙だと思った作品です。手の届かない遠くにあるものをレンズを通して覗き続ける時の自分自身の寂しさのようなものを微かに感じられるところが好きなのかも知れません。
『雪に包まれる』/ある冬の日の薄明の時間、遠くに見える山並みとちらちらと灯り出す家の灯りと雪で明るさを持っている街や大地と。これから夜に向かって行く1日のうちで一番儚いような時間を流れる車窓で一瞬だけ捉えているところが全てを表していると思います。 昨日とか今日とか明日とか日々が続いて行く中で、「ある冬の日」の「ある時」という感覚がものすごく伝わってくる写真です。
『陽光を浴びながら』/この写真の面白さはとても沢山あって、並んで行脚しているお祭りの様子とそれを微笑みながら見守るかのようなたんぽぽ、小さな人々と大きなたんぽぽとの逆転してしまった大きさ感、黄色い半被と誰でも一眼でわかるたんぽぽの花の黄色との楽しいリンク、と、言葉で説明してしまうのは無粋かもしれませんが見れば見るほど楽しくなる、とても春らしい空気に溢れた作品です!
『Balanced Serenity』/石積みには民間信仰などの意味合いもあるようですが、幾何学的な石の重なりの静と、起ち上がる霧の有機的な動が混ざり合い、モノトーンに抑えられた色調と光も含めて、何処か詩的な美しさを感じます。レンズの選択にも意思を感じられ、作者さんにはきっと独自の世界を見ている目線があるのだろうなと思うような作品です。
『奈良井宿と春の雪』/せっかくの春の旅が雪になってしまって、少し残念だったかも知れません。でもそのお陰で人のいない奈良井宿をふたり占め出来てとても楽しかったかも知れません。真冬からは少し薄着になった傘の彼女との少し離れた距離感が、 ちらちら降る雪と誰もいない宿場街の街道の静かな時間を際立たせて周りの世界の時が止まっているかのような、不思議な感覚になれる作品です。
『時散歩』/何気なく撮ったようにも思える一枚ですが、何処となくユーモアのセンスが垣間見られてじわじわと嵌ってしまうような作品です。ワイドに撮られた風景の中、何だか海の中にいるような感覚もあるような。作者さんの軽やかさを感じます。写真って自由で不思議だなぁと思います。
『麗らか』/全体的に淡い青緑色の世界の中、コブハクチョウの羽の白色と嘴のオレンジ色が映えながらも溶け込んで、水彩画のような美しさのある作品です。木漏れ日の水辺の一画を切り取った写真ですが、優しい光の動きや風や水の流れなど眼に見えないものを表現しようとしている感じがして写真の楽しみ方のひとつをまた、教えていただいた気持ちです。
『涼風』/夏の暑さの中でのタクシーの涼しさと、窓の外の緑が車内の様々なところに映り込んで流れて行く気持ち良さ。フロントガラスに映るドライバーさんの手と後部座席に座る女性の手がとても良いのです。ここにある物語を色々想像させられるとともに、こういう瞬間にシャッターを押せる作者さんの写真との向き合い方も素敵に思えた作品です。
『きれいだね~』/伝統的な行事である三九郎のある風景を、とても素直に写した余計な力の入っていない写真だと思います。火祭りに集まる地域の人たちの、高揚感もありつつどこか暮らしの延長のような力の抜け加減とそれを日常の一コマのある瞬間として何気ない目線で撮っているところが、より懐かしさのようなものをプラスしているのだと思います。見ているこちらの幼い記憶もくすぐられるような、そのさりげなさに暖かさと好感の持てる作品です。

■ 受賞作品の展示

受賞作品は、下記の期間展示いたします。

展示期間

2024年10月27日(日) ~ 11月17日(日)

会場

松本PARCO 3F 特設会場

(松本市中央1-10-30)